【中国時代劇・歴史ドラマ事典】シリーズ
故事成語の原典が一杯!賢者は歴史に学ぶ!
1.三国志・キングダムファンにもお勧め!
2.三国志 Three Kingdomsと旧三国演義
3.曹操
4.項羽と劉邦 King’s War
5.大秦帝国 The Qin Empire 黒色裂変・縦横
6.燃ゆる呉越-越王勾践
7.孫子兵法
8.隋唐演義
9.その他、脱落したドラマとここまでのまとめ
10.宮廷の諍い女
11.水滸伝
12.琅琊榜(ろうやぼう)―麒麟の才子、風雲起こす―
13.則天武后〜美しき謀りの妃
14.武則天-The Empress-(武媚娘傳奇)
15.蘭陵王
16.岳飛伝-THE LAST HERO-
17.傾城の雪
18.宮 パレス2
19.秀麗伝~美しき賢后と帝の紡ぐ愛~
本当に凄いドラマである。
政治を志す人全員に見てもらいたい傑作です。
前回取り上げた「項羽と劉邦 King’s War」の冒頭に出てくる秦の始皇帝が中国を統一するまでの苦難の道のり。
始皇帝は嬴政という名前ですがその六代前の孝公=嬴渠梁の時代から小国で辺境の地にあった秦が成長していく姿を6シリーズ(各51話)掛けて描くという壮大なスケールの歴史大河ドラマ。
大秦帝国第一部:裂変
(2016/9/19:加筆)
春秋戦国時代、秦は西の果ての野蛮で貧しく弱い国だった。
これを君主孝公が求賢令で探した衛鞅(後の商鞅)の変法により強国に上り詰めていく。
映像は彩度が低く淡い寒々しい色調で纏められて最初から最後まで重々しく悲劇的。
貴族から土地を取り上げて庶民に分け与えたり法を身分に関わらず厳格に適用していく事から国は成長するものの既得権者からは恨みを買う衛鞅。
特に孝公の太子である嬴駟(後の恵文王)が庶民を殺した際に後見役の公子虔(孝公の兄)を鼻削ぎの刑に処した事から「法は絶対である」という意識が国の隅々まで浸透した。
罪を犯した嬴駟と衛鞅。
「俺への罰はどんな罰だ?!」と衛鞅に迫る公子虔。
「鼻削ぎの刑」と言い放つ衛鞅。
庶民が公正な裁きを求めて決起しています。
今から刑の執行を宣言する衛鞅。
鼻削ぎの計を大衆の面前で執行。
これで下々の民からは信頼されますが貴族をはじめ既得権を奪われたりした者からの恨むはどんどん募っていきます。
自分の兄が鼻削ぎの刑に処されたと報告を受け・・
あまりの衝撃に気を失いそうになる孝公。
公子虔の元に駆けつけて、もう変法は止めて衛鞅を殺しましょう!と言う孝公。
変法を止める必要はないという虔。
公子虔は人前に出れなくなり籠ってしまいます。
怒りの余りそもそもの原因である太子嬴駟を斬り殺そうとする孝公。
事後初めて再会する孝公と衛鞅。
この後、孝公と衛鞅は固い絆と信頼で強力に改革を推し進めたがあまりの心労に孝公は早逝。
中国の歴史では君主が変われば先代の功臣が大きな難に見舞われるのはお決まりのパターン。
周りが自分を恨む者ばかりで庇ってくれる後ろ盾を亡くした商鞅には悲劇的な最後が待っていました。
改革というものがいかに既得権者の反発により困難を極めるか。
そして大きな犠牲を伴うのか、改めて思い知らされる。
ちなみに同じく悲劇的な作品の「燃ゆる呉越」と今作は同じ監督によるものです。
大秦帝国第二部:縦横
絵作りは前作同様彩度が低く陰鬱な画ですが演出が若干コミカルで軽い感じになっています。
前作の最後で孝公と商鞅が死に今作は跡継ぎである嬴駟が即位するところから始まります。
秦の君主として初めて王を称する事になります。
前作は主君=孝公と臣下=商鞅の物語でしたが、
今作は主君=恵文王と臣下=張儀の物語になります。
この張儀というのが舌先三寸で相手を言いくるめるのが得意な事から
「いかに弁舌で敵国を騙すか?」
というところが見どころになってきます。
主役級の二人の演技力が素晴らしいです。
恵文王役の富大龍(フー・ダーロン)は「隋唐演義」で楊広(後の煬帝)を怪演していますが、チョイ悪な男が凄く似合います。
張儀役の喩恩泰(ユー・エンタイ)は日本人にもいてそうな愛着のある顔で頼りなげですが弁舌鮮やかでそのギャップがいいですね。
その他にも魏王役の李立群(リー・リーチュン)や公孫衍(犀首)役の姚櫓(ヤオ・ルー)など芸達者が多いです。
音楽も良いですね。
壮大なオープニング曲が中国の歴史ドラマを色々見てますが一番好きです。
恵文王の長子(武王)が跡を継ぎますがすぐに死んでしまい、弟の昭襄王が即位するところでこのシリーズは終わりです。
昭襄王~孝文王~荘襄王~始皇帝なのでまだ道のりは長いです。
本作で出てくる有名なエピソードと故事
疑事無功
合従連衡
(追記:2016/9/20)
中国本土では第三部が始まってるみたいです。
http://plus.lastscene.com/archives/9214