【中国時代劇・歴史ドラマ事典】シリーズ
故事成語の原典が一杯!賢者は歴史に学ぶ!
1.三国志・キングダムファンにもお勧め!
2.三国志 Three Kingdomsと旧三国演義
3.曹操
4.項羽と劉邦 King’s War
5.大秦帝国 The Qin Empire 黒色裂変・縦横
6.燃ゆる呉越-越王勾践
7.孫子兵法
8.隋唐演義
9.その他、脱落したドラマとここまでのまとめ
10.宮廷の諍い女
11.水滸伝
12.琅琊榜(ろうやぼう)―麒麟の才子、風雲起こす―
13.則天武后〜美しき謀りの妃
14.武則天-The Empress-(武媚娘傳奇)
15.蘭陵王
16.岳飛伝-THE LAST HERO-
17.傾城の雪
18.宮 パレス2
19.秀麗伝~美しき賢后と帝の紡ぐ愛~
(追記:2016/6/27)
久しぶりに見返しています。
地味なんですがやはりいい作品です。
「隋唐演義」などのキンキラキンの絵面とは正反対の水墨画みたいな彩度を抑えた色調で落ち着きがあります。
「三国志 Three Kingdoms」が群像劇で視点も軸になる人物もコロコロ変わっていくのに対してこちらはあくまでも曹操が最初から最後まで中心。
曹操と袁紹、曹操と卞夫人、曹操と董卓、曹操と劉備、曹操と陳宮・・このように曹操と他の人との関係性を描いています。
中でもドラマの後半は曹操と郭嘉の物語と言っても良い。
「人材コレクター」の異名を持つ曹操ですが中でも郭嘉は最上級の寵愛を受けていました。
「何でも忌憚なく意見を言うように」と言って君臣の壁を取り払おうとしたかと思えば逆に「あくまでもお前は臣下、私は主君」と冷たく言い放ち、結果郭嘉に冷めた目で見られると「あ、言いすぎちゃった・・」と慌ててしまう可愛い曹操です。
「三国志 Three Kingdoms」での威厳のある曹操とは違い等身大で弱さを至る所に感じられる人間像になっています。
曹操と蔡琰(蔡文姫)の関係も繊細な心情がよく描かれています。
好きなのにはっきり言えない曹操。
卞夫人の時は積極的だったのに。
「三国志 Three Kingdoms」ではわからなかった曹昴、曹安民、典韋が死ぬことになった賈詡による計略も見れて曹操ファンには必見のドラマだと思います。
(追記:2016/5/20)
旧三国、新三国(三国志 Three Kingdoms)、レッドクリフ、そして今作「曹操」。
この中で一番カッコいいのはレッドクリフのチャン・フォンイーかもしれません。
でも一番好きなのはこの作品の曹操です。
前にも書きましたが新三国の曹操役の陳建斌さんは「宮廷の諍い女」でもいい演技をしている素晴らしい役者さんですがなにせ目が一重で小さく顔が平坦なので表情がどうしても乏しいんですよね。
それに対してドラマで曹操を演じる趙立新(チャオ・リーシン)は濃い顔立ちで表情が豊か。
ドラマ後半は郭嘉が準主役みたいな感じでクローズアップされますが、このやり取りが実に味わい深い。
曹操は郭嘉に全幅の信頼を寄せているし、寵愛しているんですよね。
でもたまに「あくまでも俺が主君でお前は臣下」っていうのをわからせようと尊大な態度を取る。
それに対して郭嘉が突き放したようなよそよそしい冷淡な態度で返すとすぐに慌てるんですよね。
蔡文姫とのやり取りも好きなのに立場上好きだと認められない辛さがにじみ出て侘しい。
下記でも触れていますが「三国志Three Kingdoms」とオーバーラップしてる時代は同じシーンが出てきます。
「董卓暗殺未遂~呂伯奢殺害」や呂布を捉えた後の処遇を劉備と共に裁決するシーン。
兵糧を管理する人間を兵の怒りを鎮める為に殺す場面、許攸とのやり取り・・この辺りは新三国との演出の違いを見比べて楽しめます。
それに対してこの作品独自のシーンとしてはやはり美人計に嵌り典韋、曹安民、曹昂を失ったところが衝撃的でしたね。
このドラマは微妙な感情変化を丁寧に描いているところが最大の魅力ですが唯一の欠点が劉備、関羽、張飛が軽くて存在感が薄いところです。
劉備が軽薄な人物として描かれてるのは「わざと」そういう設定にしてるのだとわかるのでいいのですが関羽がひょろひょろして弱弱しいのはキャスティングミスだと思います。
でも「三国志Three Kingdoms」で陳宮を演じて俳優による袁紹は良かったです。
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これは前回の「三国志 Three Kingdoms」と比べると地味ですが味のあるドラマです。
曹操の幼少時代から袁紹との官渡の戦い辺りまでを扱ってるので後半の部分は「三国志 Three Kingdoms」とオーバーラップしています。
同じシーンを「三国志 Three Kingdoms」と見比べてみるのも楽しいです。
ちなみに「三国志 Three Kingdoms」で陳宮を演じていた孫洪濤(スン・ホンタオ)が今作では袁紹を熱演しています。
このドラマの特徴としては、何と言っても曹操役の俳優さんが素晴らしい事ですね。
「三国志 Three Kingdoms」で曹操を演じている陳建斌(チェン・ジェンビン)はいい役者さんですが「顔が薄い」ので表情の変化がわかりづらいんです。
それに対して今作の趙立新(チャオ・リーシン)は正反対の「濃い顔」でセリフじゃなくて表情で演じるのが巧い。
特に劉備とのやり取りの中で言葉に出さずとも表情だけで脅したり、郭嘉や蔡琰(字:文姫)に自分の思いが通じない時の悲しい表情など素晴らしい表現力だなあと思いました。
従来の三国志ドラマではあまり出てこなかった郭嘉,夏侯惇,夏侯淵,典韋,曹安民,曹昂といった面々がフィーチャーされてるところも楽しめました。
卞氏とのロマンスも見どころ。
終盤の郭嘉と曹操の微妙な関係も非常に繊細な人間心理を丁寧に描いていて見応え十分でした。
映像は彩度を極端に落として、寒々とした心象を絵作りでも表現しています。
音楽も素晴らしく、派手な戦闘シーンはないのですが心に残る作品となっています。
できればもっと先の時代まで観たかったと思わせてくれます。