アメリカの国務長官だったキッシンジャーは部下に
「報告書をまとめて自分のオフィスの机に置いておくように」
と指示した。
部下が書類作成をし終えて机の上に置いて立ち去るとしばらくして自分の机の上に書類は戻されてメモが付いていた。
「これで精一杯なのか?」
部下は書類を見直し推敲して、もう一度持って行った。
するとまた同じようにメモが付いて戻されていた。
うんざりしながらも再度文章を磨き上げてまた持って行った。
するとまた同じメモが付いて戻っていた。
さすがに怒ってキッシンジャーの元へ行って大声で訴えた。
「もうこれで本当に精一杯なんですよ!」
するとキッシンジャーは言った。
「じゃあ今から本当に読むとしよう」
***
アメリカの5大財閥の1つ・モルガン財閥の創始者J.P.モルガンは知り合いの宝石商に真珠のネクタイピンを注文した。
宝石商は最高の真珠にピンを付けて5000ドルの請求書と一緒に送った。
数日後、宝石商の元にピンの箱と4000ドルの小切手が送り返されてきた。
付いていたメモにはこう書かれていた。
「素晴らしい真珠だが、5000ドルは高過ぎる。4000ドルの小切手を受け取る気があれば、ピンの箱は開けずにそのまま送り返して頂きたい」
宝石商は怒って小切手を断り、ネクタイピンを取り出そうと箱を開けた。
するとピンは入っておらず、5000ドルの小切手が入っていた。
偉大な人物は下らない事に時間を浪費しないという事がよくわかる2つのエピソードです。
ジョン・ロックフェラーはスタンダードオイルを拡大する際、中小の製油所を買収していった。
抵抗する製油所に対処する為に隠密裏に鉄道網を買収し、彼らが買収に応じなければ輸送費を大幅に値上げすると脅した。
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ジェイ・グールドはウエスタンユニオン電信会社に対抗する自らの電信会社を設立した。
ウエスタンユニオンは邪魔者を買収することで追い払った。
するとグールドはまた別の電信会社を設立した。
これも同じように買収された。
このような事が何度か繰り返された後、とうとうグールドは会社の売却で得た莫大な資金を元にウエスタンユニオンを自分のものにした。
ウエスタンユニオンは「グールドの目的は会社を買い取らせること」だと思っていたが、そのもう一段向こうに真の目的があったのだ。
ジョン・ロックフェラーはこれまで会った者の中で
最もスキルの高い実業家としてグールドの名前を挙げた。
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エチオピアの皇帝となったハイレ・セラシエ1世は最後まで抵抗を続けた部族の酋長を宴に招待した。
酋長は宴で暗殺されることを恐れ、自分の軍隊を連れて行くことにした。
精鋭のみを宴に帯同させ、残りは近くで野営させていつでも攻撃できるように備えさせた。
セラシエは自ら酌をして歓待したが酋長は常に毒見をさせたり、護衛が飲み過ぎないように注意した。
無事に宴も終わり、セラシエが腰抜けだとわかった酋長は攻撃を仕掛けるつもりで野営地へ戻った。
ところが野営地には焚火の消された後だけが残り、兵士は誰もいなかった。
近くの村人に訊くと、宴が開かれてる間にセラシエの軍隊が来て、大量の金貨をばら撒いて武器を買い取り兵士を立ち去らせたと言う。
危険を察知した酋長はすぐに逃げようとしたがセラシエの軍隊に包囲されて降参するしかなかった。
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アメリカのギャングの帝王アル・カポネの元に紳士が訪れた。
その紳士はカポネに
「5万ドル預けてくれたら2か月で倍にする」と言った。
カポネは強い疑いの眼差しで彼を睨みつけながらも5万ドルを彼に預けた。
2か月後、紳士が戻ってきた。
彼は言った。「申し訳ありません、失敗しました」
カポネは怒りで顔を紅潮させてどうやってこの紳士を殺してやろうかと考えてた時、紳士は続けて言った。
「倍にすることは出来ませんでした。元金の5万ドルはお返しします」と5万ドルを差し出した。
カポネは驚愕して言った。
「あんたを一目見た瞬間から詐欺師だとわかっていたんだ!だから10万ドルになるかゼロになるかどっちかだと思っていた。それなのにあんたは5万ドル返しに来た・・」
紳士が小声で詫びて立ち去ろうとするとカポネは呼び止めた。
「あんたみたいな正直な人間は初めて見た。もし困ってるならこれを使ってくれ」
返してもらった5万ドルの中から5000ドルを渡した。
紳士は有名な詐欺師で最初からこれが狙いだった。
真の目的を隠し相手の意識を違う事に集中させれば油断して自滅する。
特に交渉事ではこの手法は有効だ。
ある村の茶屋で一人の商人が茶を飲んだ後、茶碗をひっくり返しながら吟味していた。
商人が去った後、それを見ていた職人が店主に「あれは誰か」と尋ねると有名な鑑定家の伏見屋だと言う。
職人は「そんな人があれだけ吟味するなら価値のある茶碗だろう」と主人から半ば強引に持っていた全財産の三両でそれを買い取った。
その後江戸中の骨董屋に持ち込むが、「ガラクタ同然で価値はない」と断られた。
がっかりしながら最後に伏見屋に行くと主人は
「湯気の立ち方が変なのでどこから漏れているのかと見ていただけ」と言い、やはり茶碗には価値がないと言う。
それを聞いた職人の余りの落胆ぶりを見て気の毒に思った伏見屋は茶碗を百両で買い取ってやった。
この話が伝わり、「伏見屋が百両出して買った茶碗ならさぞ価値があるに違いない」と売って欲しいという人が殺到した。
しかし二百両で買いたいという商人二人が茶碗を取り合いになり割ってしまう。
結局、売買の話はなくなり伏見屋は割れた茶碗を糊付けして押入れにしまい込んだ。
数年後、高名な茶人である松平不昧が伏見屋を訪れ茶碗を見たいと所望した。
茶碗を見た不昧は
「確かに茶碗としては大したことはないが茶人というものはその物自体の価値よりも情趣や含蓄を重んじるものだ」
と言って茶碗を千両で買い取った。
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アメリカでストーリーの価値に関する実験が行われました。
ガレージセール等で集めたガラクタにプロのライターが考えたその物にまつわる「でっち上げのストーリー」をセットにしてオークションサイトで売り出したらなんと120ドルで仕入れたモノが3600ドルで売れたそうです。
つまりなんと価値が30倍になったということです。
モノ自体の物的価値よりそれに付随する物語や含蓄の方が価値があるという事ですね。
画家ルーベンスは大勢の弟子を使い「黄金の工房」を構築した。
弟子たちは背景専門、人物のみ、服担当、等と分担作業をして作品を量産した。
そして顧客が工房に見学に来る時は前もって弟子を追い出してルーベンス一人で黙々と作業してる様子を見せつけた。
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発明王エジソンは「自分が数学者である必要はない。数学者ならいつでも雇える」と言った。
彼はセルビア人の発明家ニコラ・テスラを雇い、安い賃金で数々の発明をさせて手柄を横取りした。
後に彼が会社を辞めて開発した交流電流に対して嫌がらせをする為に交流による電気椅子を死刑執行に使わせて交流に対するネガティブキャンペーンまでした。
エジソンは言う。
「商業や工業の世界では誰もが盗みをはたらいている。
私自身も多くのものを盗んできた。
だが、私は盗み方を心得ている」