非常に面白かったです。
政と趙姫の趙時代や趙偃と郭開コンビを丁寧に描いてきたのがここで効いてきましたね。
「疑り深い」と言えば秦王・政の性格を表すのによく用いられる形容詞ですが本作では全くそのようには描かれておらず、聡明な君主とされています。
一方で趙偃を猜疑心が強く慎重で悪賢い人物に設定していますね。
その猜疑心を利用して彼が常に言われた言葉の裏を読む事を前提に罠を仕掛けてる所が秀逸でした。しかしながら謀に完璧はなく、姫丹が勝手に行動した事で秦の計画全てがぶち壊しになるところなんかも真実味があってドキドキハラハラしました。特に姫丹の首級が入った箱(実は空箱)を見て号泣してみせる秦王・政のウソ泣きシーン。もし趙偃が首を見たがったらどうなってた事か・・本作でピークのエピソードでした!
【58-60話】
趙に燕を攻めさせてその隙に秦は趙を急襲。
秦の真意を知らない燕の太子・姫丹は憤るばかり。
ここまでその猜疑心で生き残ってきた趙偃もとうとうお亡くなりに・・
文字の統一事業は秦の文字を基本にしていますが秦は中国でも西の果てで文化の中心地とは言えなかった場所なのでもし違う国が勝者なら今の漢字も変わってたのかな?
今回は戦闘シーンが良かったですね。
中国ドラマはなんか大量に怪我人出てそうな迫力で、演技が出来ない馬なんかは本当に殺してるみたいなのでリアリティが違いますね。
姫丹の政への恨みもかなり募ってきたみたいなので歴史的なあの出来事への伏線もちゃんと引けてますね。
【61-63話】
韓非が秦に対抗する合従の為に奔走する。
韓非をライバル視する李斯は対抗策を講じる。
秦は国によってバラバラだった篆書体を統合して秦篆として使用を強要し他国は反発する。
三晋である趙・魏・韓は秦への対抗で一致するが交易の盛んな斉は秦側の切り崩し工作で折れてしまう。
そんな中趙は反撃の策として呂不韋を丞相として迎えようとする・・
お互いの駆け引きがスリリングで見応えがありましたね。
【64-66話】
4国からの招聘を断るも危険視され蜀へ転封になった呂不韋は悲観の余り自害。それを聞いた秦王は衝撃を受け、怒りの矛先を趙に向け即座の攻撃を命じる。
ここの秦王の怒髪天を突くような感情を剥き出しにする演技は良かったですね。
出陣した桓齮将軍は趙の名将・李牧に肥下の戦いで敗れ恥辱に耐え切れず自害。援軍に来た王翦将軍はなんとか趙軍を蹴散らす。
一方、秦では巨大な水路である鄭国渠が完成。
三晋では韓非が合従を結ぶ為に奔走。
趙は武器が不足し、銅鉄を増産する為に魏・韓に私鋳の解禁を要請するが韓非らは農民が作物をほったらかして鋳造することで食糧不足になる事を危惧し、当方人の趙がまず私鋳の解禁をするべきだと突き放す。
燕の太子・丹は助け船を出し、匈奴経由で銅鉄を趙に運ぶ事を提案するがそれにも韓非は反対し、趙の春平君は憤慨してしまう。
この辺りのやり取りは非常に見応えがありました。
秦に対抗するという点では一致できても、各国個別の利害が絡むとなかなか一致団結とはいかず同床異夢になってしまうみたいですね。
すっかりお笑いキャラに成り下がった趙の丞相・郭開は秦側の仕掛けにより銅鉄の暴騰に関与します。
久しぶりに登場の樊於期は燕に逃れ、太子・丹の庇護下に。
これが後の秦王暗殺未遂の伏線となります。
それにしても1対6の戦いにもかかわらず、各個撃破で1の方が勝ち上がっていく軌跡を見ていくのは非常に勉強になります。
*残り4日=12話(3話x4日)ですね。
ここまで続けてこられたのは奇跡ですね。
【67-69話】
韓非の死~韓の滅亡まで。
事象の流れ的には史実に基づいてるとは思うのですが、韓非が愚直な公子として描かれて李斯が善人として演出されてるのが気になったかな。
李斯が韓非を危険視して自ら能動的に毒殺したというのが一般的な見解ですが本作だと韓非に同情を示してるところが李斯びいきに感じますね。
韓非の行動も深い考えなしにただ単に韓を守りたい一心でそこには策略も何もなく、とても『韓非子』という人間の負の感情や性悪説、功利主義を説いた人間の行動とは思えない。
さて残り3日ですね。
まさかここまで続けられるとは思いませんでした。
六国の内1国減って残り五ヶ国。
それにしても6対1で6が負けるなんてあまりにも無能揃い過ぎですよね。
【70-72話】
趙滅亡。
戦闘より有能な武将である李牧を排除する為に離間の計を巡らす所が面白い。
それにしても郭開は最初から最後まで見事な屑っぷりでしたね。
この人の顔って日本人にもいそうな顔なんですが誰かは思い出せません。
【73-75話】
終盤のクライマックス「秦王暗殺未遂」。
それにしても燕の太子丹は最初から最後まで愚かな公子でしたね。
やる事なすこと稚拙過ぎて。樊於期もこれでは無駄死にで気の毒過ぎます。
三晋(趙・魏・韓)+燕が滅亡で残りは楚と斉のみ。
それにしても途中でドロップするかと思いましたが後1日で終わり。
眠いのを我慢してよく続けてきました。
次見たら暫く中国ドラマはお休みかな・・
【76-78話最終回】
楚との決戦。
後の西楚の覇王・項羽の祖父にあたる項燕に秦は苦戦。
秦の大将軍・王翦は65万の大軍を秦王から与えられ楚を攻める。
この際に有名な秦王・政に褒美を何度もねだるエピソードが挿入されるが本作において政は猜疑心が強い人物として描かれておらず割と素直に人を信じてしまうタイプとして扱われてるので唐突に感じる。
政の夫人の内、一人は楚人故に連座で冷宮入り。
残りの一人は兄である斉王を説得に。
臨淄を包囲されて斉は降伏。
これにて遂に秦による中華統一が果たされた・・
長かった・・
深夜というか早朝というか午前4時という一番寝てる時間に睡魔と戦いながら遂に完走。
ていうか・・
大秦帝国第一部から数えると13年だそうです。
最後のクレジットに「14年制作に携わったスタッフに敬意を!」と自分から書いちゃう所が中国人らしいなと思いました。日本人なら絶対にこんな事書かないですもんね。
それにしても第一部の「大秦帝国之裂変」を見た時はまだ中国ドラマを観始めた頃で史実に基づきながら基本シリアス、たまにコミカルという重厚な作風で映像も彩度が低く荒涼感を感じさせて、まさに本格歴史ドラマを感じる出来映えでした。
打って変わって第二部の「大秦帝国 縦横」は主人公・恵文王を演じる富大龍の演技プランからしてコメディ色が強まり、張儀との関係は見ていて微笑ましくとっつきやすい作風にシフトしました。この時期は史実的にそれ程大きなイベントがある訳でなく恵文王の恋愛関係と張儀の活躍にフォーカスされていました。終盤は次世代への布石を描く為に短命の武王の運命と後の昭襄王・嬴稷の燕からの帰国劇がドラマチックに描かれた。
第三部の「昭王」は時期的に一番ネタの数が豊富でシリーズの中でも面白さではダントツ。蘇秦や范雎、白起などこの時代の有名人が登場し史実に残る有名な逸話も沢山採り上げられて見所が多い。また昭襄王の母・宣太后は「縦横」からの連投で羋八子時代からも含めて演じた宁静の怪演ぶりには驚かされる。
そして本作第四部の「大秦賦」となる訳ですが、この時期を描いた作品の中では地味な印象は否めない。特に「コウラン伝 始皇帝の母」と比べると話が平坦に思える。そもそも呂不韋役に段奕宏を配したキャスティングは失敗だと思う。彼は悪い俳優ではないのだが重さに欠けるしこういう役どころには向いてないと思う。