普段、本屋に行っても同じコーナーしか見ないのだがたまたま探しものがあってウロウロしてたら将棋本のコーナーを見つけた。藤井聡太の本が大量に平積みになっていて驚いた。
この本はデビュー前の幼少期のエピソードから始まり、メインは29連勝を全局すべてカラー写真2ページずつ使って解説されている。
後半は三枚堂達也、斎藤慎太郎、永瀬拓矢といった20代のTOP棋士による藤井聡太評を知ることができる。
彼は小学生の低学年の時点で業界では噂になっていた。
その頃に既に非凡なる才能を現していたのである。
自分は去年(2017年)から将棋をネットで見る事にハマった。
藤井聡太の連勝記録や羽生さんの永世七冠も掛かって注目される事の多い年だった。
ちょうどTVを捨てて見るものがなかったからだが、AbemaTVやニコ生で将棋の対局を中継してたのもあり、結構沢山見た。
自分は人の本音というのは言葉ではなく表情に現れると思う。
私が藤井聡太に一番驚いたのは、AbemaTVの炎の七番勝負という企画において若手の俊英やベテラン棋士をなぎ倒した事ではない。一番驚いたのは最終局で羽生善治を破った後、「ちっとも嬉しそうな顔をしなかった」事である。つまりこれは何を意味するかというと彼は羽生に勝った事を意外な出来事とは思っていなかったという事である。
くしくも同書ではこの事に言及している棋士もいた。
言葉で美辞麗句やおべんちゃら、世辞を言おうが表情からは本音が透けて見える。
彼が公式戦で深浦九段に負けた時に大変悔しそうな表情と態度を取ったのが話題になった。
これ程悔しいとあからさまに態度に出すというのは裏を返せば「勝って当然と思っていた」という事だ。相手は現役のA級棋士であり、王位を3期も取った実力者である。そのベテランに対して勝って当たり前と思っている・・なんと恐ろしい自信か。
この自信は朝日杯において、現役の佐藤名人と羽生竜王を破った時にも覗い知れた。
なんとも控えめな喜び具合である。棋戦優勝など当たり前、別にタイトル取った訳でもないからさほど嬉しくもないとでも言いたげな感じであった。末恐ろしいと思ったのは私だけではないはず。
最近、20代棋士のインタビュー特集が某ブログで公開されたが、そこで語られた内容と同じような事が本書の終わりにも出てくる。意外にもTOPに位置する20代棋士から藤井聡太に対する敵意みたいなものはなかった。むしろ先程棋王戦で渡辺棋王に挑戦してフルセットで惜しくも破れた永瀬拓矢などは藤井聡太を「尊敬する」とまで言い切った。彼は上述の「炎の七番勝負」で7人中唯一藤井聡太に勝ったにも関わらずである。棋士同士であれば棋譜を見ればその力は理解できる。あまりの異次元の強さに畏怖の念を抱くのであろう。
本書は彼がいかに天才であるかが多面的に分析されてよくわかる本である。
最小限の将棋の知識はあったほうがいいが藤井聡太の凄さを実感してほしい。